白シャツを恋い慕う

つれづれなるままに…おたく

そいつは俺の罪じゃねえ。@星組アルジェの男



 

完全に演目買いした今回の全ツ星組@相模大野。

演目発表からずっと楽しみにしてきた。

2011年月組版でアナベルとアンリ(今回はアンドレ)にきゅんとさせられ、ジャックのジュリアンに対する気持ちの大きさに新手の三角関係をみた。

自分の成長とともに視点が変わっていくのが面白くて柴田作品は出来る限り再演を追いかけている。琥珀シャロンやルイの良さが分かりだしたのは望海雪の時だったし、早霧雪でのコルドバエバの気持ちが分かる日が来るとは思ってもみなかった。

激情の月だけ生では見れていないんだけれど、こんな感じのスタンスで宝塚の芝居を見ている部分は常にある。

もし若い方がこれを読んでいたら、同じものへのアプローチが変わることを自覚できるこの趣味は10年後財産になるかもしれないよとひっそりと思っていることをお伝えしたい。

 





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※11日夜のアドリブが鳩サブレだったので。

 

 

11日・12日共に夜公演のみ観劇した。ショーではすごい手拍子もそろっていて、星組の新たな門出を祝う場に参加できたことはとても良かった。

今回のアルジェの男は一言でいうならばものすごく配役センスがいい。個々人のバランスが絶妙なのだ。そして主演をはじめ歌が上手い(従来の星のイメージ比)から集中できる。

 

前作フロリアンの時から白い役に野心が透けた人だなと思っていた礼真琴の演じるジュリアンは野心をむき出しに生きてきた人で、本来の持ち味なんだなと思った。時折役者の背景と真逆だからこそ安心して見れるのだなあとも思った。抜群にソロが上手い。だから周りの芝居を追っているときも聞きやすい。

あと星といえば揃える気のない自由形群舞で有名だと思うんだけど、このアルジェのプロローグはそろっていて圧巻だった。きっと群舞をそろえることに力を入れるスターさんなのだとお見受けした。

ジュリアンの話に戻ると、若さゆえの野心による身の滅ぼしみたいなこの王道の部分をちゃんと表現してくれていたなと思う。アナベルに女の喜びを…という提案しかりエリザベートのことしかり、頭はきれるし野心も十分だけれども少し青いから選んでしまうという絶妙な塩梅だったなと思う。

 

音波サビーヌは情愛の人。受け入れる度量の深さが印象的で、ジュリアンがアルジェを立つ時の頬へのキスシーンとその表情の美しさにほれぼれした。このサビーヌが愛するんだから、ジュリアンのことも見守ろう見たいな気持ちが開始20分で芽生えてしまった。歌も昔に比べたらうまくなっていたし、何より芝居中で歌うので役が乗っていたから気にならなかった。昔の男を追ってくる健気さとジャックを撃つだけの情熱がちゃんとサビーヌの中に同居していたなあと思った。あとパリとジャックに染まりすぎない余白というか芯の強さが見えて、全てをサビーヌという人物に込められる娘役芸の深さを感じた。

ジャックを撃ってからの芝居も圧巻で、最後アンドレが出てくることを完全に忘れて見られなかったぐらい。完全に泣かされた。

 

愛月ジャックはあの大柄な体と包容力でさぞかし芯のある悪人かと思いきや、ただのドグズで終わる。前回はジュリアンがトップさんでジャックが龍さんだったから「置いていかないでくれ」というような一方通行の気持ちを感じたのだけれど、今回はそうでもなく。やっていることがめちゃくちゃしょぼいガタイのいいクズで、ジュリアンとの関係は対等だった。変にジュリアンにびびったりせずに真っ向から向き合うジャックだなあと思った。

器の小さい役をやらせて初めて感じる、愛ちゃんの男役の度量の深さ。次はいつ会えるか分からないけれど、また見たい。月城愛月のハリーものがみたい。

 

紫藤ミッシェルの清涼剤としての機能が抜群で、ジャックの理解者として人選も最適だった。人の思惑が渦巻く社交界で、この人だけは信じていいという人が紫藤ミッシェルでよかった。一期違いの敵役とかいいと思うので今後に期待。

極美アンドレは芝居が短いシーンしかないんだなと2回見て思った。比重が下げられているのにラスト撃ったことを違和感ないようにしなきゃいけないのは大変だと思う。アナベルを軽々とお姫様抱っこをしていることに希望が見えた。

小桜アナベルは見たかったキャストの一人で、本当に期待通り。こんな可憐な子に手を出すか!?というジュリアンの非道さを強調してくれた。最後のソロも上手だったし、この人は身投げ以外に選択肢がないことを納得させてくれる芝居だった。古風な雰囲気がとてもよく似合う。

桜庭エリザベートはお名前ぐらいしか知らずに見に行ったのですが、期待以上。「嘘つき」っていうセリフだけで男を呪い殺せるような娘役さんもいる中、あれだけ泣きわめいているのに重すぎない。ヒロインしすぎないともいえるし、現代ものっぽい軽さのある感じがよかった。アナベルとの対比でこの人もまた可哀想だったのだと初めてわかった。

 

朝水ボランジュの優しくて素敵なオジサマ具合をはじめ、新しい星組になっても支えてくれるんだろう方々の活躍もよかったです。

 

ショーは礼音波のプロローグとデュエダンの手足のそろい具合に感動して、手を出す角度までこんな揃えてくるなんて!!という気持ちで今年一番いいデュエダンを見たなと思っている。

黒燕尾も同じ振りなのかな?本公演1回しか見ていないので分からないけれど。そろっていて、本当に星!?と思いながらやっぱり率いていく方の方針だろうと勝手に確信した。

あと瑠璃花夏ちゃんがめちゃくちゃかわいくて、次の楽しみになった。ロケットでウィンクする最下って有望すぎるでしょ。ロケット5人口にもいたし。

愛ちゃんは小桜ちゃんとのならびがよかったなあ。王道の宝塚な感じがする。

 

ということで星版アルジェの男楽しかったです。ジュリアンとサビーヌ、ジャックのパワーバランスが絶妙で、配役がいいということに尽きるのではないかなと思いました。

実はすでに次回大劇場の方はチケットを入手したので、星は久々に緩やかに見ていきたい組になりました。