エリザベート前半戦 フランツに愛をこめて
エリザベート2015が幕を開け、約1か月が経過した。
現状3回観劇した。
エリザベートは見れば見るほど様々なところが気になって、考察したくなる。
それを忘れないように、ただ自分のためだけに色々書き留めておきたいと思う。
6月12日プレビュー
蘭乃・城田・佐藤・京本・剣・尾上・大内
6月25日
蘭乃・井上・田代・京本・剣・山崎・池田
6月30日マチネ
蘭乃・城田・田代・古川・香寿・山崎・松井
前半戦3回でタイトルロールの花總さん以外は全員網羅した。
今回は前評判関係なしに全員1度は見る(おそらく好きであろうキャストや応援したい人は心なしか大目に)をテーマにチケットを確保したので計画通りではある。
3回を通しての雑感は東宝のエリザベートはエリザベートの物語なはずなのにトートが真ん中と錯覚させるようなお話だった。役者バランスの問題で花總さんをみれば多分これは解消される(と思う)が、プレビューに関してはトートの一人勝ちだった。でも、30日同じ蘭乃シシィ城田トートにも関わらず、フランツとルキーニ(特にフランツ)が変わったことで男性陣のレベルがぐっとあがり、トートVSフランツの物語に寄り添うエリザベート(宝塚版のそれ)にしか見えなかった。
台詞もシーン展開も東宝なのに不思議な話だ。
25日の井上トートは役者としての経験が豊富だからか、一人でエリザベートという役を作っている印象の蘭乃エリザを引っ張り上げているような印象もあり、蘭乃シシィは井上トートの方が成り立っているようにも感じた。
ここからはキャストごとに今の印象を。
何度も見れば感じ方やとらえ方は変わるが根底はやはり自分の主観なので次に見るときに非常に役立つ。
好き、嫌いよりも何を思ってそう感じたか残っていると、駄目かも。と思ったキャストを段々好きになる喜びがある。
エリザベート(蘭乃)
娘役蘭乃はなは本当に好きだった。
女優蘭乃はなはどうなるか分からない。
やっぱりエリザベートを演じてゾフィ目線の客に四の五の言われるよりも、デュエットダンスで輝く彼女が好きだし、カチューシャのような荒い言葉でもまっすぐに表現していくような役が本質な気がする。
まず、宝塚版のシシィと東宝版のシシィは掘り下げられ方も描かれ方も違うのに、DVDと同じ音で喋っている箇所があるのが気になった。
ただ、25日以降パパみたいにがうまくなってのびのびしていてよかった。
プレビューの私だけに。は本人比とても上手くなっていて、感情とこれがエリザベートの話であることが伝わってきて良かった。
あと鏡の間の振り返り。彼女の武器美貌はやっぱり役にたった。
そしてプレビューの蘭乃エリザベートが誕生した瞬間に居合わせた興奮はとてもすごかった。
歌はさておき、雰囲気と美貌、ドレス捌きや所作の美しさは流石だと思ったし、個としては彼女のエリザベート嫌いではない。
あとは周りとのパワーバランスというか…難しいな。
そもそも自分の問題として、何年もみているくせに本筋からそれるせいでエリザベートとは…?に相応しい答えがまだない。後半戦で見つけることが出来たらなと。
トート(井上&城田)
Wキャスト素晴らしい。全く違うものだった。
まず、エリザベートという作品がシシィが自由を求めるだけでなく恋愛物語とも受け取ることが出来たのはこのトートのおかげ。
「私を返して」と言われて初めて愛と死の円舞曲が成立する宝塚版と違って、本当に一目ぼれのトートからの矢印のみで愛と死の円舞曲が成立する東宝版。
(と書きましたが、印象にないだけで花總シシィはちゃんとありました…ごめんなさい。)
一言があるかないかのシリーズは比較していくとものすごく面白いので、この機会に少しずつ書いてみようと思う。
一目ぼれ力が印象深かったのは城田トートだった。エリザベート一人にだけ眼差しがあつい。あれだけ見た目が二次元っぽいのに、○○軍大尉にもいそうで○○伯爵にもいそうだなと思った。多分中身がすごく人間くさい感情に溢れている印象。
見た目と中身が相反するというか、繊細に見える。
逆に井上トートはエリベートは勿論、エリザベートに関するすべてのものを我が物にしようとしていて、個人的に新たなトート像だった。全てを望んでいる気がするトートと全てを望んで全てを手に入れたトートは違うので、歌と芝居の説得力がものを言うんだと思った。見た目は非常に人間味ありそうだが、見終えると巨大蛇とかなんだか人外なものしか浮かんでこないのがこっちのトート。大胆な心とマント捌きや歩き方の繊細さが真逆に映る。
子ルドの「猫を殺した」に反応してくれるトート。国、人によって本当に違う反応だから、ここのトートがすごく好き。
二人は望んでいるものも見えているものも違うので田代フランツとの悪夢は別物だった。終始自分とエリザベートの世界で葛藤しているらしい城田トートと最果てもなく望みながらも悪夢で焦点がエリザベートに絞られると思われる井上トート。
最初からフランツと決して対等に渡り合う気もない城田トートと別な道を歩んできたはずなのにフランツが見てきた視点からも攻撃して奪おうとする井上トート。攻撃性からして両者がヒートアップする後者はなんだかデスマッチみたいだった。
花總シシィを交えたときどんな関係を築いていくのかがひたすら楽しみ。
ルキーニ(尾上&山崎)
ルキーニがどんな人物で何を求め何がこの役に必要か…まで考えたことなかった。
というのがもはや結論に近い。
ただ、ルキーニがうまく世界観に引き込んでくれるかどうかは大事だとは思っているけれど。曲は本当に難しいんだなというのが分かった。
「ミルク」は宝塚版はトートと交互だし、最後はトートがしめる。でも東宝版はルキーニ1人。この曲を1人で歌うのは難しいんだ…とプレビューで思い、でもやっぱり歌えるんだ…と25日に思った。
裏の主人公なのも分かってはいるが現状興味がないのかな?
エリザベートの流れを妨げずにすすめてくれたらいい。ぐらいの認識なのかもしれない。
尾上さんは高音がでなかったのと尾上!っていう自己主張が激しく、心なしか和っぽいルキーニで、育三郎くんはたまにアレンジがすごいけれど基本的には全部歌えて、トート閣下に凄く従属しているルキーニだとは思った。
飛ばした小鳥やら演出の細かな所やエリザベートの物語をどんな視点で送り届けてくれるのかを後半戦見ていきたい。
フランツ(佐藤&田代)
今回の本命といっても過言ではないフランツ。
フランツはとりあえず歌がうまければ話は通る。浮気はするし、マザコンだし、大好きなルドルフがフランツと対立するのもあって、正直なんだか好きじゃなかった。
でも、2014花フランツをみて、何か自分はフランツについて勘違いしているのかもしれない。すごく立派にみえる…?と感じた所から話が始まる。
プレビューの佐藤さんは特に今までのフランツのとりあえず居ればいいでしょ。な印象を覆すことはなく、ひたすら美声を聞かせているなという印象。かなり歌は上手い。
ただ、私は蘭乃シシィを普通に見ている時点で歌の音程にはさほど厳しくなく(流石に蘭乃シシィはまずい)、芝居の方が自分にとっては大事なこととして捉えている。
けれども佐藤フランツは蘭乃シシィとの相性も多分よくなくて、終始何故結婚した?と思いながら、見る羽目になった。
あと、ゾフィを両方見終えたから感じるのだが、プレビューは剣さんという針のようなゾフィだったが、佐藤さんはどちらかといえば優しく温厚さがある香寿ゾフィの息子っぽいので、周りとのあわなさも多分原因。
調べたらミュージカル2作目とのこと。そりゃ難役にあたりましたね。
なんとなく万里生くんが好きだと思っていたので、残りは全部万里生フランツ。
25日の初見の際は東宝では話の本筋から逸れてるはずのフランツが、きちんとトートと対立し、シシィを愛している姿を見た。本来主要三役から漏れているはずなのに、完全に食い込んできてる!
私がエリザベートというストーリーに求めていたフランツ像を発見したと思う。
フランツを構成するパーツとして、皇帝、男性(シシィへの愛)、親(対ルドルフ)の3つを挙げているのだが、大抵愛が見えないまま、皇帝だった。という印象しか残らない人が多い。
けれども、曲としては夜のボートをはじめ、愛に溢れたものが中心。
たまに男性としてシシィを愛していたけど、皇帝でなくても良い気がする。という人もいる。
そもそもフランツが一目ぼれの後はシシィを義務的に愛したとしたら夜のボートには繋がらないと思っているし、皇帝でなければエリザベートの物語に必要な人物ではなくなるので、最後までシシィを愛する気持ちと皇帝の二面性の狭間にいてほしいと思っている。
これを体現して、かつ親でもあり、ハプスブルクの黄昏を一緒に生きてくれたのが万里生フランツだった。
嵐も怖くはないで(東宝はあなたが傍にいれば。でした。すみません。結婚前のシーンです)シシィに対して向けるひとつひとつの温かい眼差しと本当に愛したことが分かり、皇后の務め等で動く際には直角直進、厳しく育てられたことを窺わせ、シシィの居室では優しく歌い上げ、少し涙をみせる。1幕終わりの三角関係があんなに分かりやすいとは…
(大体のフランツはここですでにトートやエリザベートに負けているか戦う気もない)
マデレーネのシーン。
マデレーネがトート閣下の刺客っていうポイントと宝塚でやれる限界っぽい際どさが好きで宝塚版マデレーネは大好きだが、東宝のそのシーンにはフランツはいないので万里生フランツで見なくて良かった。浮気の直接描写がなくてよかった。
イケコのよく分からないさじ加減に感謝。
ゾフィとの対立シーンは、プレビューでは剣さんに持っていかれたのもあり、ただの逆ギレにしか見えなかったのが、万里生フランツはフランツ版ママ鏡というか、本当の所マザコンだったフランツを思い出した。
ママには頼れない。字面とあのフランツの歳を照らし合わせると違和感だけれど、間違いなく初めての訣別だったし、ゾフィに対して怒る前に自分の過ちを責め立てているような印象。ゾフィに写った自分の姿に怒っていたともいえるかなと。
そしてフランツの親としての顔を引き立たせてくれたのが、古川ルドルフ。
京本ルドルフより溝と対立が深かったので、怒るエネルギーも多かったのかもしれない。フランツの親としての顔を見ることが出来た。
ルドルフの死後、エリザベートが棺にすがるシーン。
宝塚版はそのエリザベートの姿を気遣って「皆退出するように」と声をかけるのだが、東宝版は無言。でも、無言で良かったというか、言葉が必要ないほどエリザベートを気遣っているのが分った。一回ふりほどかれるのに、また抱きしめにいって避けられるその行動と、表情が切ない。
あれだけルドルフに怒っていたのに、棺の前で悲しみを堪えているように見える。皇帝として律しているのだろうなとかシシィを気遣って悲しみを共有しようと思っているのだろうなとか…あくまで想像ですが、そう感じさせる表情と表現が多彩。
夜のボートはフランツの台詞自体は同じ(はず)です。
「分かっているだろう。なぜ私がここへ来たか?」
エリザベートの受け答えが
宝塚版「分かっていると、思います」
東宝版「いいえ、でも予感が致しました」
(二つの台詞が違う)
と違って、なんで違うのかはイケコに聞かなきゃ分からないけれども、万里生フランツは「いいえ」と拒絶されても最後の「愛してる」の一言が重くて、突き刺さる。
宝塚版はここからふわっとしてフランツも若返る幻のような最終答弁、愛のテーマだけれど、東宝版は地に足ついた地獄のような悪夢からの昇天なのでどちらも違ってどちらも良いが、その流れに汲んだ一言なのかな?とは思っている。
悪夢はトートの所にも書いたが、なんだか別物。
フランツの主張がこんなにも正しいと感じたことはなくて、トートが邪魔だった。とさえ思ったので見え方でこんなにも物語が変わるのか…。と思っている。
本来はその愛に見合うだけのエリザベート像を自分で作ってくるのが当たり前だろけれど、歌という壁がある中蘭乃シシィが少しでも幸せな「幸せになりましょう」を歌えたのはこちらのフランツだったなと感じた。
本当に万里生フランツよかったなーと浸っています。
ただこれだけフルパワーで演じていたら干からびたりしないのかは、勝手に心配しています。
これで万里生くんが出演しているから!という理由で作品を見に行くことも増えると思うし、個人的に上半期ベスト賞です。ルドルフの二人と悩んだけど。
ゾフィ(剣&香寿)
ここも、今回正解はこれなんじゃないか?と思う姿を見つけました。剣さん。
今までなんとなくフランツ同様、厳しいイメージと歌える人がいればいいんじゃない?って思っていましたが、プレビューを見た時にバッと正解を提示された気がしました。
ゾフィは宝塚版より東宝版の方が「死ぬ」というシーンが増えていて、役も重くなる分見ごたえもある。
なんとなく宝塚版は娘役さんだと小物な印象だったり、男役さんだとパワーでねじ伏せるようなイメージのゾフィだったけれど、剣さんのは針のような鋭利さと聳え立つ城のような威厳のあるゾフィでした。
強く、厳しく、息子を育てて皇帝にした姿と死ぬ間際の優しさの差が激しくて、ハプスブルク600年の歴史を守ってきたのだなと思った。
宮廷の男という表現は今まで見てきた丸く広いかめはめ波みたいな爆発するパワーではなくて、実は直立不動に構えたこの姿のことをさしたのではないかなと感じる。
最初の人で今回の流れを掴んで二回目の人がよくみえるのかな?とフランツで思っていたけれど、ゾフィは違ったのでよくみえる人は最初からなんか感じると思う。
香寿さんは声に元々包容力があり、優しいトーンだからか、ゾフィが優しい印象だった。あくまでゾフィ比の優しさだけれど。
気品高く、温厚で誠実そうながらも厳しさはあるような感じ。どっか他国にもいそうで、ハプスブルクのゾフィである必要があったかというとどうなんだろう?という所でひっかかりました。
死のシーンはフランツに対して本当に優しいし、心から思っているのだけれども、なんとなく優しい人の優しさよりも一ミリも優しくない人が優しさを見せた方が個人的には感動してしまうので、剣さんの役作り勝ちだと思った。ただ香寿さんの歌は本当に素晴らしく綺麗でした。
他よりすごくハイレベルな所で話をしている気はしているので、全然嫌いとかはなくて香寿さんは他の役の方が好きかも。というだけの話。
ルドルフ(京本&古川)
元々エリザベートのルドルフが宝塚の中の好きな役ベスト3に入ることもあり、ルドルフについては子ルドごと別記事にしようと思っている。
今回も大好きです。
後半戦3回も花總シシィと共に歩んでいきたいと思います。